2017/02/09

自然と人間

偉大なる自然を縦(ほしいまま)にしてしまえる人間の力
その事に初めて恐れおののいた十八の冬 私は水俣にいた

丘から眺めた夕日に作業を続けるショベルカーが影絵のように浮き上がる

かつて水平線だった地平線

水銀値が高すぎると埋められてしまったその海には
その身をもって水銀を濃縮した魚たちの遺骸がドラム缶に詰められ埋まっている

土に沈んだ魚たちの息苦しさの上

終わりのないいのちの輪のなかに毒水を垂れ流し続けた人たちの真の目的は何だったろうか

それはあまりにも簡単な答え
 -簡単すぎて誰も信じようとはしないほど


自然を滅ぼしていくことを何とも思わない人々は確かにいる
おなじ人間に深い苦しみを負わせるとしても それを厭わない闇の力

自分は決して与したくないと思う一方
やはりどうしたって組み込まれている


私は
新たに埋められようとしている碧い海と
今 切り倒されている森の木々と
既に潰された泉たちと無関係ではない

そのことを忘れない

この星の全てを奪い尽くすのではなく
これ以上ない瀬戸際で いのちの世界を選ぶ

いのちたちの美しさの中 満たされていくなにかを感じ
かつての私たちのように 生かされている喜びと感謝に胸をふるわそう